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GemShip Creator's Story

さあ、心の鍵を開けて 物語をはじめよう
小日向まるこ

現在、漫画家として活躍する小日向まるこさん。 女子刑務所の美容室を舞台に、女性の心と人生をみずみずしく描いた『塀の中の美容室』(原作:桜井美奈)は、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。 その抒情的な作品群の道しるべとして、心と向き合いながら追いかけてきた、さまざまな創作の変遷があります。 絵を描いた幼少期、GIFアニメを制作した学生時代、漫画で物語を紡ぐ今、そしてアニメーションで新しい表現を模索する未来のことを、小日向さんの目を通して、私たちも覗いてみましょう。

1. 絵、漫画、アニメーションへの扉

私(小日向まるこ、以下「私」で統一)の古い記憶では、保育園のときにはもう絵を描いていました。実際、2歳の私が絵筆を持っている写真が残っているので、この記憶は正しいのでしょう。5歳で母子家庭となり、母と兄を家族に育ちました。母は絵が好きで、よく私を美術館に連れて行きました。長かったひとりの時間は絵と物語に救われ、いつのまにか漠然と、将来は絵の表現を仕事にしたいと思うようになりました。

もちろん、漫画、テレビアニメ、アニメ映画もよく見ていました。子供のころはおジャ魔女どれみやジブリ映画が好きでしたが、成長するにつれて、自主制作アニメーションに魅かれるようになりました。中学生のとき、新海誠監督の『ほしのこえ』を知り、事実上一人で制作したことに驚きました。また、石田祐康監督の『フミコの告白』を見て、自分と歳が近い学生たちが制作したことに刺激を受けました。

高校生になると、海外のアート・アニメーションにも興味を持ちました。フレデリック・バックの『木を植えた男』や、Vimeoに投稿されるアート・アニメーションに触れました。現在、私が制作している油絵タッチのアニメーションは、これらの作品の影響を受けているところがあると思います。

2. 自主制作の学生時代と、商業世界への招待状

中学生のときに初めてアニメーションを制作しました。長編作品を作ろうと思い、物語を考え、絵コンテをきって制作に取り掛かりました。当時はクリエイティブ・ソフトウェアが少なく、使い方も難しく、なんとか手探りで模索していましたが、最後まで作り方がわからず、完成には至りませんでした。

当時制作した作品で、今でも手元に残っているものがあります。14歳ぐらいの時に制作した歯車のGIFアニメです。ペンでパーツを描いて、フォトショップのレイヤー機能で動かしていました。

アニメーションの長編作品が完成しなかったことは、当時の私にとって大きな挫折でした。イラストや漫画に意識が向いていき、スマホで読める漫画サービスcomicoに縦読みスクロールの漫画を投稿したところ、そのまま編集部から連絡が来てデビューとなりました。

今振り返ると、当時発表した漫画は、縦読みスクロールという特性もあり、映像を意識した作品になっています。また、海外のアート・アニメーション、そして藝術作品全般に影響を受け、私の中に育っていった”ある種の絵画性”への憧憬、言い換えるなら”どんな景色も絵画のように美しい”という感性が、油絵タッチの作風として漫画に表出するようになったのも、この頃です。

3. 漫画家としての活躍、”私の中の物語”

2015年春に漫画の連載を始めてからも、自分に何が向いているのかを試行錯誤する20代前半を過ごしました。本が出版され、いろいろな方から熱い感想をいただき、翻訳されたことによって海外の方にも認知していただけるようになり、これらのことは一人ではできないと実感して、初めて漫画家としての意識が根付きました。

今の私には、漫画で表現してみたいテーマがあります。幼少期の体験、家族との思い出をさかのぼり、”なぜ今の私が生まれたのか”を、漫画の表現で探っていきたいのです。私の中に描きたい物語がある限り、漫画を続けようと思っています。

4. 新しい表現を探して、再びアニメーションへ

個人でアニメーションの制作を再開したのは最近です。漫画でしか表現できないことがあるように、アニメーションでしか表現できないこともあり、同じ”絵の表現”のひとつとして、将来の可能性を広げるために取り組んでいます。

アニメーション制作の使いやすいアプリが出てきたのも、再チャレンジするきっかけになりました。過去にはウェディング・ムービーなどを制作したこともありますが、今はMVの制作に興味を持っています。

より多くの人に見てもらえるように、コンペにも参加していきたいと思っていますし、海外の仕事を受けられるように、英語の勉強もしています。積極的に機会を捉えて、新たな私を発見していきたいのです。私のタッチで見てみたいアニメーションがあれば、リクエストしてもらえると嬉しいです。

クリエイタープロフィール

小日向まるこ。1994年生まれ、漫画・イラスト・アニメーション作家。 『塀の中の美容室』(原作:桜井美奈)が第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞(2021)。 最新作『あかり』(コミプレ・ふらっとヒーローズ/株式会社ヒーローズ、2022)。 他、『アルティストは花を踏まない』(ビッグコミック/小学館、2019)、『ぼくの忘れ物』(eBigComic4/小学館、2017)等作品多数。

小日向まるこ

フリーで漫画・イラスト・アニメーションの制作をしています。 あたたかさ、やさしさ、さみしさなどをやわらかいタッチで描くのが好きです。 お仕事のご相談はこちらからどうぞ💌maruco415@gmail.com